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HPで管理するのが色々と面倒になってきたので、 とりあえず作成。

直したい。

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直したい。




 現在大陸西部に位置する大国、
魔物を相手に戦う公式冒険者の集団、
所謂個人ギルドの一つであるZempことZekeZeroHampには、
色々な流れで魔王が居候している。
巷の噂よりずっと庶民的で付き合いづらさはないのだが、
魔王だけあって、変な知識を蓄えており、
安易に助成を頼むと痛い目に遭わされたりもする。
それでも、通常手に入らない情報を求め、
無謀に手をだした奴が居た。

「ちょっと、カオスさん。
 聞きたいことがあるんだけど。」
「やだよ。
 態々そう言ってくるからには、どうせろくなことじゃねえだろ。」
「冷蔵庫にプリンが3つあります。」
「聞くだけだぞ。ったくもー」
ギルドのサブマスターであり、
同業者から一目置かれる白魔道士でもあるユッシが、
山羊足の魔術師の異名を持つ魔王、カオスになにかしら、
ちょっかいをかけようとしているのを見て、
同じ部屋に居たメンバーたちは顔を見合わせた。

いくら普段から同居人として親しく付き合っていても、
カオスは魔王であり、必要とあれば手を汚すことも厭わない危険牌であるが、
ユッシはユッシで高い向上心からくる合理主義に寄って、
手段を選ばないところがある上に人の話を聞かない。
止めたところで大人しく従うはずがなく、
無理に止めさせれば、諦めるどころか見えないところで動きだしかねない。
そうなれば更に面倒なことになるのは必至である。
よっぽどのこと、腕力による強制終了を執行せざるを得ない自体になるまで、
成り行きを見守るしかないのだ。

カオスの善良な配慮に期待するしかないと、
彼らは溜息を付き、メンバーの理性より、
魔王の良心の方が当てになる環境に悲しくなった。
加えてプリンに釣られて態度を変える魔王ってどうだろうと、残念に思う。
周囲がそんな陰鬱な心持ちになっていることなど知らず、
知ってても無視する輩共は、淡々と会話を始めた。
「で、何が聴きたいって?」
「こないださ、死んだ本人そのままの幽霊は、
 まず居ないって話をしてくれたじゃん。
 死んで体から離れた霊体はすぐに崩壊しちゃうから、
 生前の意識を保てるほど強力な霊は、それこそ神様じゃないと居ないって。」
「ああね、そんな話をしたかもな。」
「それで、現在確認できる幽霊的な存在、いわゆる死霊とかは、
 仮に人の霊体が混ざったとしても、
 再構築済みの生前とは関係ない全くの別者だし、
 動く死体やスケルトンに至っては人為的、自然的な理由はともかく、
 それこそ魔力の流れに動かされているだけ、
 別途、後付の動力があって、本人じゃないってことだったよね。」
「そうな、だいたいそんな感じだな。」
「つまり、種類が色々あっても、結局みんな死んで消滅していて、
 当人が復活してるわけじゃないってことだよね、
 巷で言うアンデットってやつらは。」
「死んでるからアンデットなんだろ。何だ、今更。」

ここまで矢継ぎ早に質問したユッシは、否定がないと知ると、
ふんと鼻息荒くも満足げに腕を組み、
カオスは呆れた様子でバリバリ頭を掻いた。
初っ端からおばけの話と雲行きの怪しさにメンバー達の顔色が悪くなっていく中、
じゃあ、とユッシは更に話を続けた。
「つまり、今上げた存在及び、それらを作る方法は不老不死としては勿論、
 死んでも復活する、死を超えて存在し続けるための術として不適切、
 もしくは失敗してるってことだよね?」

不老不死。
数多の権力者が追い求め、高名な学者が試行錯誤し、
賢者がどれだけ己を研磨しても辿り着けない、
人類最古にして最大の欲望。
そして蘇生する死者。死からの逸脱。ありえないものの代名詞。
どちらにしても人間如きが触れてはいけない、
神の領域へ踏み込む質問に、カオスの顔が歪む。
「それがどうした?」
低く、殺意と狂気を載せたその声に、
ただでさえ悪かったメンバー全員の顔が蒼白になり、
魔王はただ言葉を発するだけで、部屋の空気を冷たく凍らせた。
「その小賢しい頭を使って、
 身の程知らずな計算式でもはじき出したか?
 確かにお前の揚げた例では無理だとしても、
 不死の術がない理由にはならない。
 寧ろ、別のやり方をすれば、
 死して尚、生きる方法があるかもしれないな。
 いいぜ、教えてやるよ。その脆弱性から持たざるものとも呼ばれる人間が、
 神霊と同じ存在になるには何が必要か。ただし、」
瞳に蒼い炎を宿した魔物は嘲笑う。
「代金は高く付くぜ。それこそ、お前の命一つじゃ足らねえほどにな。」
「そんな情報、いらないよ。」
世界を制する力を持った魔術師の威圧を歯牙にも掛けず、
それこそ無表情に白魔導士は即答した。

そればかりか、ブーブーと文句を叩きつける。
「分かってるでしょ! そんなん、うちが興味ないって!
 だいたいさあ、そうやって無駄にそれっぽく振る舞うの止めなよ!
 きいたんが真似するって、こないだクレイさんやユーリさんに怒られたし、
 自分でも反省してたでしょ!!」
「反省はあまりしてない。でも、問題だなとは思ってる。」
先日、父親と一緒にギルドに居候している幼児が、
「だいきんは、きちゃまのたまちいだけどな!」と、
メンバーを面白半分に恫喝した旨はギルドの管轄者に速やかに報告された。
結果、普段娘の面倒を見ている弟子とその友達に、
カオスは大層怒られたのだが、この魔術師、さほど気にしてないらしい。
いつも通り、ぎゃあぎゃあ騒ぐユッシと、
あっさり態度を戻して、それを聞き流すカオスのやり取りは、
一気に冷え切った部屋の温度を同じ勢いで元に戻したが、
返って温度差によるダメージを居合わせた者に食らわせた。

「本当に、止めてほしい。
 心臓に悪すぎるよ、うちの子たちは…」
「もうちょっと穏便に出来るくせに、
 双方、何で無駄に大事になるやり方で進めるかな…」
「っていうかカオスさん、
 サラッと問題発言してますよね。聞かれた以上に。」
ぶつぶつと苦情が背後から聞こえても止まるユッシではなく、
そもそも、それで止まるなら始めから抑えられているわけで、
白魔導士は全く意に介さず会話を続ける。
「ともかくさ、
 自分の魂を他者に預けることで霊体の崩壊を防ぎ、
 その間に肉体を修復するでも、
 新しい体を複製して乗り換えるでも、
 人工生物と一体化して、体の構造自体を変えるでも、
 どうでも良いんだよ、不老不死の術は。」
「確かに近い方法で成果は得られるけど、
 その前にユッシ、また悪い本を読んだろ。
  出処は紅玲だな。
 ったく、仕様がないなーあいつも。」
この場に居ない弟子の所業にカオスは溜息をつくが、
代金高いと言う割に自身の発言内容に配慮していないのは、
どう考えても故意であろう。
一歩間違えれば聞くだけで破滅しかねない危険情報に、
あるものは眉を顰め、あるものは耳をふさいだ。

しかし、そんな事ユッシには関係ない。
彼にとって大事なのは自分の疑問を解決することだ。
「話を横にそらさないでよ、進まないじゃん!」
プンプン怒りながらも、確認したいことを並べていく。
「それで、アンデッドって呼び方をよく考えると不(UN)死(DEAD)、
 死体じゃない、死んでないってことじゃん。
 不老不死、死を超越した人のことは、不滅者(Immortaliitty)っていうけど、
 不死者だって死なない、死んでないものってことじゃん。」
「そうだな。」
「でも、あいつら、死んでるよね?
 アンデッドが大量に出るフロティアのダンジョンも、
 不死者の洞窟って名前だけど、あそこに出る奴らは、
 動くだけで死体だよね?
 そこに棲んでる魔王セイロンも、不死者の帝王とか呼ばれてるけど、
 要はゾンビだよね。 死んでるよね?」
ユッシが上げた洞窟や魔王は、確かにそのように呼ばれている。
最も厳密ではなく、「不」はついたり、つかなかったりするが、
それを指摘しても解決には繋がらないのだろう。
矢継ぎ早に喚く白魔導士がこれ以上余計なことを言わないか、
心配そうにメンバーたちが見守る中で、
根本を察したカオスは複雑な顔で頷いた。
「爺さんは非常にイレギュラーとはいえ、
 正式には付喪神の方に属するんだろうが、
 体の持ち主が復活したわけじゃないから、そう言う意味じゃ死んでるな。」
「その中の人も、体壊せば消滅するよね? 死ぬよね?」
「そもそもが普通の生物と同等じゃないから、
 器を傷つけるだけでは難しいかもしれんが、
 一定範囲のダメージを与えれば死ぬな。」
「だよね? 死霊とかだって、ダメージ与えれば消えるもんね? 死ぬよね?」

予測正しく、己の危惧するところから外れたと、
若干投げやりに頷くカオスに、
改めて我が意を得たりと、ユッシは叫んだ。
「つまり、あいつらは死んでるし、
  不滅じゃない。
 それなのに不死者って呼ばれてる。これはおかしいよ!」
「まあ、アンデッドって元々は、
 ヴァンパイアを指す言葉として発生したらしいけどな。」
カオスの豆知識に白魔導士はますます憤る。
「それならわかるよ! 確かに吸血鬼って超長命だし、
 なかなか死なないし、夜中に動くし、
 そのくせ、ちゃんと生きてるから確かにそんな感じだよ!
 でもさ、ゾンビやスケルトンは死んでるでしょ! 本人でもないでしょ!
 それを死なない者とするのはどう考えてもおかしいよ!
 カオスさん、ゾンビやスケルトンはアンデッドって呼ばれないようにして!」
一息に言い切って、勢い余り、
バンと机を叩いたユッシに、周囲は顔を歪めたまま無言で固まり、
カオスはゆるゆると息を吐いた。
「あのな、ユッシ。残念だけど、俺にそんな権限はないんだ。」
「困るんだよね! こういういい加減な言葉があると、
 論文書くのに邪魔なんだよ!」
断られてなお、怒るユッシにかける言葉は誰も持たなかった。
うちの白魔導士は黙って優秀になったわけではなく、
あれこれ勉強し、鍛錬を重ねているが、
そのはずみで変なスイッチが入ったらしい。
他の意味でもはた迷惑な向上心の産物に、当人以外は揃って肩を落とした。


 

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